高尾の豆知識 


  


 高尾山縁起によれば、ここを開いたのは遠く聖武天皇の時代にさかのぼるらしい。

 この時代は、日本古代史の中で最も華やかな奈良時代であり、奈良の都には東大寺の大佛殿などが造営され、日本全国六十余州の各々の国には、国分寺が建立された。

 真言宗智山派大本山である高尾山薬王院は、奈良時代の天平十六年(744)に聖武天皇の勅命を受け、東大寺大仏の建立の悲願のため諸国に国分寺造営を命じた天皇の願いを達成すべく薬師の像を刻んだ行基菩薩が東国鎮護の祈願寺として、道を開いたと言われている。



4-3.高尾山と大山詣り


 江戸中期に講中登山の流行が起きた。「講」という、集まりは同じ信仰をもつ人たちの結社というか今で言うと「サークル」とでも言うようなそういうものが盛んであったようです。本当に信心からお参りをした方もいたんでしょうが、おおよそは楽しみを求めての団体旅行って感じではなかったかと思われます。その中でも人気が富士山への講と大山詣りです。

 さて、富士信仰の歴史は古く、平安時代にはすでに登山する行者もおり、また戦国時代に至ると、行者の数はかなりの数に上っています。伝統的な山岳宗教だったと言えましょう。しかし、それが庶民の間にひろがり、講として確立するのは江戸時代後半に入ってからのことです。富士山で修行を積んだ修験者達が、江戸各地の 「 富士講 」 を通して信者を募り、富士山へ先導するようになってからである。 富士講とは、先達といわれる富士信仰の熱心な信者や、登山経験豊富な者を中心に組織された集団のことをいいます。富士詣は、甲州街道から富士吉田に出てその当時80軒ほどもあった御師の宿に泊まり、翌日、精進潔斎して富士山に登るのでした。

 さて一方、大山詣りは、神奈川県伊勢原市にある大山(1252m)山頂にある 阿夫利(あぶり)神社に参詣することです。大山寺は石尊大権現(せきそんだいごんげん)ともいわれたので石尊参り(せきそんまいり)ともいいました。大山が全国的に有名になったのは江戸時代です。庶民の間に大山信仰が広まったのでした。大山信仰を広めたのは御師(おし)と呼ばれる「先導師」。この先導師という人々は、もともと大山で修行をしていた修験者でしたが、戦国時代に小田原北条氏と結び付いて僧兵の性格を持つようになっていったので、それを危ぶんだ徳川家康に下山させられました。先導師たちは、全国各地を歩き、大山講(こう)というサークルを作り、盛んに大山詣でを勧めたのです。今は電車、バス、ケーブルカーと乗り継げば楽に行けますが、当時はそんなものはありません。江戸市中から全行程を自分の足だけを頼りに往復したわけですが、往復100km以上はあるでしょうから、大変なものでした。しかし江戸の庶民が2泊3日くらいで出かけられる大山は、便利な行楽地だったのでしょう。大山詣でが隆盛を極めた宝暦年間(1751~1764)には、1シーズンに20万人もの参詣客が訪れたといいます。

 さて、一方高尾山にも富士講中というものがありました。もともと我が国には山岳信仰があり、その最たるのが富士講中といえます。高尾山薬王院の記録によると室町時代に富士浅間神社を勧請したとの記録、つまりは富士山のご祭神である木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)にご出張願ったとの記録があります。遠く富士山まで行かずとも高尾山にお参りすれば同じご利益があるというものです。
当時、江戸から富士登山へ行くには、少なくみても七日は要し、費用も体力もさることながら、箱根の関を通過するための通行手形の申請、交付という面倒な手続きも必要としました。 富士は古来より霊峰として崇められ、ご利益を授かりたいと、登拝を望む者は少なくなかった。 そこで、富士山へ登りたくても登れない高齢者や女性、体の弱い人達でも遠く富士山まで行かずとも高尾山にお参りすれば同じご利益があるというものです。高尾山薬王院から甲州街道の小仏峠に通じる道を昔は「富士道」といっていましたが今は廃道となってところどころにしかその面影をみることはできません。富士信仰の人々がこの霊峰を仰ぎ見ることのできる高尾の富士浅間神社を目指して通った道です。                                       
 さてこの江戸時代にはやった大山詣りと高尾山の富士講中をなんといっしょにした優れものが出てきたのです。今で言えば名プロデュースといったところでしょうか男神である大山の石尊大権現と女神である富士山の木花開耶姫命の両方にお参りすれば効果は何倍もあるというのですからこれには江戸の庶民はまさにフィーバーでしょう。

高尾山自然研究路6号路には今も「大山橋」という橋が残っていますし、薬王院から南へ下る今は廃道となった道は「大山道」と呼ばれていたのはその名残です。



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