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高尾通信
圏央道計画の危険性



建設計画と危険性

建設省(当時)が進めている圏央道は昭和51年に発表された国土庁の第3次首都圏基本計画の中で「広域多核都市複合体の形成と、周辺地域の広域的都市圏育成のため、拠点間交通体系の重点項目」として位置づけられたものです。

57年には東京都長期計画にも盛り込まれ、21世紀の多摩を切り拓く一大動脈とみられています。都心部に集中する交通を適切に分散させるとともに、首都圏の周辺に位置する横浜、厚木、八王子、川越、久喜、つくば、成田、木更津などの都市を連結し、相互の連携強化を図ることにより、各都市の育成・振興に大きく貢献する環状道路として、その整備が急がれています。


しかしながら、圏央道計画は、計画が明らかになった当時から、自然環境や住環境を破壊し、大量の自動車交通と、それにともなう深刻な道路公害が持ち込まれることが指摘されてきました。

圏央道のルートは、横須賀道路を起点に、厚木―八王子―秋川―青梅―川越―筑波学園都市―成田など都心から40〜50キロ圏内の主要都市をぐるり環状的に結び、総延長200キロ、事業費は2700億円にのぼる一大プロジェクトです。自動車専用道路である圏央道は最小幅員20.5メートル、4〜6車線をもち各ポイントに巨大なジャンクション(インターチェンジ)が建設される。

第一期計画は、東京都八王子市南浅川町の一般国道20号線との接合地点から埼玉県川島町の一般国道254号線との接合地点までの約50kmである。
そのうち東京都分の、埼玉県境の青梅市今井5丁目から高尾山南麓の八王子市南浅川町一般国道20号までの間の、22.5kmが、1989年に都市計画決定をみた。
さらに、1997年2月には、一般国道20号から神奈川県境までの圏央道が都市計画決定された。

これら計画によると、圏央道工事は、八王子市下恩方町で既に貫通した恩方トンネルに引き続き北浅川橋の橋梁部分工事を行い、さらに八王子城跡の下を直径約10m、全長約2.4kmに及ぶ2本のトンネル工事を行うとされている。北高尾山稜の城山をくり貫く八王子城跡トンネルからでてきた圏央道は、高尾山の山腹に掘られたトンネルに吸い込まれ八王子市南浅川を経由して神奈川県側に抜けるというものだったのです。  

高尾の北側山麓に東西に延びる旧甲州街道沿いに八王子裏高尾の集落があります。


八王子城跡トンネルと高尾山トンネルとの間は地上約60m、長さ約420mの2本の橋梁が、間隔約40mの巨大な橋梁を形成し、裏高尾住民の住宅地域を威圧する。
高尾山北麓には中央自動車道と接続させるための巨大なジャンクションを建設し、高尾山の下を直径約10m、全長約1.3kmの2本のトンネルを掘って八王子市南浅川町の高尾山南麓(後述―1997年神奈川県境までの2.5kmが都市計画決定)で国道20号線とのインターチェンジをつくる計画である。

このジャンクションは、約8本のループ式で裏高尾地区の地上(都道)から約80mの高さに東西約800m、南北約300m、総延長約8kmに及ぶ巨大なものである。

また高尾山南麓の南浅川地区の、圏央道と国道20号線および国道八王子南道路(三・三・二号線)とのインターチェンジ工事は、自然に囲まれた南浅川の幅200mという狭い谷合に、いずれも橋梁工事で高さ約17m、南北約300m、東西約200mのインターチェンジを建設し、谷を埋めるというものである。また高尾山北側の裏高尾町には八王子城跡トンネルと高尾山トンネルの自動車排気を集める高さ約30mの排気施設の建設も計画されている。

八王子裏高尾の集落は、表の高尾とはまた違った趣を残すひなびた集落ですが、ここにいきなり圏央道と中央自動車道を結ぶ八王子ジャンクション(通称裏高尾ジャンクション)が計画されていることを知らされたのですから地元の人々はそれはびっくりしました。

裏高尾は浅川の支流小仏川と旧甲州街道沿いに自然林が続き、時おり中央線の走る音が聞こえる程度の静かなところでした。
天狗の棲む山として恐れられ、守られてきた山です。中央高速道が出来てからは、車の爆音が高尾山に当り、あたかも高尾が怒りの声を上げているように裏高尾の谷あいを覆っている。

   



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生態系への影響

600メートル程度の低山ですが高尾山は自然の宝庫です。高尾山原産の植物だけでも、なんと40種以上を数え、千数百種の植物が自生しています。この高尾山にトンネルが掘られれば地下水脈は分断され、自然に与える影響は計り知れないものがあります。 

高尾山の植物相の特徴として、暖帯、温帯両帯の植物が共存していることが広く知られています。そのほか個体数の少ないことが特徴としてあげられています。世代交代が激しいので特に草木類にとっては、生育適地となる環境そのものの維持が最重要となります。

高尾山に産する貴重植物として100種ほどがありますが、そのうち9割以上の種が1株または5株以内しかこれまで発見されていないのです。圏央道の予定地付近、高尾山の北側斜面にはスギ、ヒノキ人工林下にしだ類が多く産している。

またこれに混じり高尾山の貴重植物であるツルギキョウが散生しています。ウラジロマタタビ、キジョウラン、レモン、エゴマ、トラノオジソなどの植物が、今回の圏央道に伴う調査から続々と発見されています。しかし、計画ではトンネル坑口が設置されるもので、これにより植物の生育地は大幅に狭められるか奪い取られる可能性があります。    

 この他、蝶類(ジャノメチョウ、ウラキンシジミ、シジミチョウなど)、哺乳類(カワネズミ、ムササビ、ヤマネ、カゲネズミ、キツネ、テン、ハクビシン)鳥類(ミサゴ、オジロワシ、コノハズク、コマドリ、アカショウビン、ブッポウソウ、など)両生類(イモリ、ヒダサンショウウオ、モリアオガエル、カジカガエルなど)など貴重な自然とともに育った彼らの棲家が奪われようとしています。裏高尾の改変は減少への道をたどることは疑うすべもありません。



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史跡の破壊の懸念

また圏央道は、貴重な史跡、文化財を串刺しにする可能性があります。裏高尾には荒井遺跡の存在が認められており、まだ詳細は不明ではあるものの、この地区一帯に城郭外郭遺跡の存在する可能性があります。

また北条氏照の居城である八王子城は中世山城の全貌が残る遺跡として中世史研究上注目されているところですが、計画路線はこの八王子城の城主郭直下をトンネルで通ることとなっている。遺跡の保存には影響がでてくるのは明確です。特に弱い岩盤やローム層中に造られている土塁や館の遺構は地下水や掘削振動の影響を受けやすいため、これによる崩壊が心配されます。  

平成16年2月のこと、圏央道の工事が進む高尾山周辺で、滝の岩肌などに付着している白い物質が、トンネルの防水工事で使われた凝固剤「セメントミルク」の可能性が高いことが地元住民団体の調査で分かった。
付着物は、同団体メンバーが今年初め、同市恩方町の滝などで発見。滝の岩肌や川底で広範囲に確認できたという。

滝の北側では14年年1月ごろ、圏央道トンネル工事現場真上の地表で白い固形物が発見され、国交省の調査で「セメントミルクが地表に噴き出したもの」とされた。このため住民側は今回、セメントミルクの固形物、滝の付着物双方を採取し、民間調査会社「環境総合研究所」(東京都品川区)に分析を依頼。実際の分析は提携するカナダの研究所が行った。その結果、分析対象の34種類の金属類中、25種類を共通して検出。ともにアルミニウム、鉄、マグネシウムが含有濃度の上位を占め、25種類の金属含有濃度も類似。「同一物質に起源があると類推できる」と結論づけている。同研究所によると、アルミニウムを多量に摂取すると痴ほうを引き起こすとの説もあるという。

国土交通省は「付着物は植物プランクトンのケイ藻」と発表したが、井戸水利用者も多い住民側は「セメント成分が地下水に溶けだしている恐れがある」として、国交省に再調査を申し入れた。


圏央道にかかる文化財一覧表
名称 所在地 内容 指定文化財
高尾山の杉並木、飯盛杉、蛸杉 八王子市高尾町 樹林 都・市記念物
小仏関所跡 八王子市裏高尾町 近世関所 国史跡
荒井遺跡、猪鼻山遺跡 八王子市裏高尾町 縄文〜近代遺跡  
八王子城遺跡 八王子市元八王子町 中世城郭 国史跡
浄福寺城跡(松竹城跡) 八王子市下恩方町 中世城郭 市史跡
下原刀鍛冶発祥の地 八王子市下恩方町 中世鍛冶跡 市史跡
辺名遺跡 八王子市下恩方町 縄文集落跡  
十内入上原遺跡 八王子市上川町 縄文集落跡  
十内入釜の沢遺跡 八王子市上川町 縄文集落跡  
川口のキハダ 八王子市川口町 樹木 都記念物
戸吹城跡 八王子市戸吹町、
秋川市上代継
中世城郭  
神明の杉 秋川市牛沼 樹木 市記念物
西秋留清水遺跡 秋川市牛沼 縄文集落跡 国史跡
西竜ケ崎塚 秋川市牛沼 古代積石塚古墳  
中村文太旧宅 秋川市牛沼 近世古民家  
富士見台遺跡 秋川市油平 縄文集落跡  
瀬戸岡古墳群 秋川市瀬戸岡 古代積石塚古墳 都旧跡
天神バケ遺跡 日の出町三吉野欠下 古代集落跡  
菅生第一遺跡 秋川市菅生 縄文集落群  
大荷田遺跡 青梅市友田町 縄文古代集落跡  
友田の植物化石 青梅市友田町 化石  
旧吉野家住宅 青梅市新町 近世古民家 都有形文化財
新町大井戸 青梅市新町 近世井戸 市史跡
鈴法寺跡 青梅市新町 近世寺院跡 都旧跡
稲荷塚 青梅市新町 中世塚  


建設費用の浪費

圏央道は、八王子城跡の真下にトンネルを掘る計画ですが、工事によって水が漏れることを指摘されると、水漏れ対策費を、100mあたり16億円もの巨費をかけて工事をし、その上、さらにその先の1kmについても、漏水対策工事を行なうというのです。

債務超過で大問題になっているアクアラインや本四架橋では、開通後の交通量が予測を大幅に下回り、開通してから料金を見直す、他の路線とプール計算にする、あるいは償還期限を大幅に延長するなどのつじつまあわせの対策をとっていますが、ますます不採算の泥沼に入り込み、赤字は雪だるまのように膨れ上がっています。

それにしても、なぜ、圏央道では、交通量予測のデータさえ、きちんと示されていないのでしょうか。その上、日の出インターとあきる野インターの間は、たったの2kmしか離れていません。こんなに近いところにインターをつくる必要が本当にあるのか、しかも、あきる野インター周辺の秋川にかけられた橋脚の数は71本にもおよび、橋脚の価格は一本平均で1億円もするというあきれた無駄遣いという批判があがっています。

この2kmの問題は、ちかくにある東京サマーランドが東京都の出資先であることが、またあらぬ憶測を生んでいる事実もあります。いずれにせよ、この2kmは、司法判断でも納得性がないことが指摘される結果となりました。







建設計画と司法判断

東京都あきる野市の居住地が首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の建設予定地に指定され、土地収用の対象となった住民らが、国土交通相による事業認定と、都収用委員会による収用裁決の取り消しを求めた行政訴訟の判決が2004年4月22日、東京地裁であった。

藤山雅行裁判長(鶴岡稔彦裁判長が代読)は「国は具体的な根拠もなく、事業に公共の利益があると判断しており、見過ごせない過誤があった」と述べ、建設相が2000年に行った青梅―あきる野IC間(10・7キロ)の事業認定と都収用委の裁決をいずれも違法として取り消した。

この日の判決は、計画されている道路について、「住民に受忍限度を超える騒音被害を与え、大気汚染が発生する恐れもある」として、「欠陥のある営造物」と断定。「都心部の交通混雑の緩和」という事業目的に関しては、「首都高中央環状線や東京外環道路が建設されれば、圏央道までは必要ない」と否定した。同ICの必要性も、「代替案の検討を全くしておらず、合理性がない」と判断。国の事業認定を前提にした都収用委の裁決も取り消されるべきだとした。

この判決は、公共事業の公益性や適法性について行政側に挙証責任を厳しく課し、事業を進める手続き面での欠陥も指摘した。公益性の程度と周辺住民に求められる「我慢」とのバランスを比較する司法審査の枠組みの中で、公益性そのものに疑問符をつけた今回の判決は、道路行政とその進め方に大きな課題を突きつけたといえる。土地収用法に基づく事業認定を取り消した判決は異例で、圏央道建設を巡る同種訴訟や公共事業の進め方に影響を与える可能性がある。

00年の事業認定の適否について検討。計画通りに建設された場合、周辺住民に受忍限度を超える騒音被害が出るほか、浮遊粒子状物質(SPM)により大気汚染が発生するおそれがあるのに、確度の高い調査をしていない点を指摘した。

行政側が主張する「都心部の交通渋滞を緩和する」という事業そのものの意義についても、「首都高速中央環状線と外環道さえ建設されるならば、圏央道までは必要がない」と断じ、「圏央道の建設にこだわることは、いたずらに人的物的投資を分散するもので、都心部の通過交通の解消という問題の解決を遅らせる」と言い切った。さらに、隣接する日の出ICが約2キロしか離れていない場所にあることについて、「合理的な説明がない」と批判。代替案の検討もされておらず、事業認定は法が要求する要件を満たしていないと結論づけた。計画の適否について事前に司法のチェックが受けられる制度が設けられていない現行法の不備についても言及。「法の支配を有効に機能させるためには、早期の司法判断を可能にする争訟手段を新設する必要がある」と付言した。

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