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高尾山天狗裁判


高尾山天狗裁判とは

「高尾山天狗裁判」とは、東京都下では、初めて行なわれる「自然の権利」訴訟です。
自然人(私たち人間)1060名(1次提訴分)と、高尾山をフィールドとする6つの自然保護団体、そしてオオタカ、ムササビ、ブナ、高尾山そのもの、八王子城跡の5つの自然物が原告となって「高尾山にトンネルは掘らないで…」と国・道路公団に訴えたのです。

東京地裁八王子支部で進められている「高尾山天狗(てんぐ)裁判」は、高尾山をトンネルで貫通する首都圏中央連絡道路(圏央道)建設差し止めを求め、1000人以上の地元住民らが国などを相手に起こした。原告に地元の自然保護団体などのほか、高尾山、同山に生息する絶滅危惧種のオオタカ、ムササビ、ブナ、さらに八王子城跡も名を連ねている。

建設中の首都圏中央連絡道路(圏央道)によって高尾山の自然が破壊されるとして、地元の自然保護団体を中心とする1060人が、国や日本道路公団を相手に、道路の一部建設差し止めを求める訴えを平成12年10月25日、東京地裁八王子支部に起こしました。                        
この訴えの原告には高尾山や、そこに生息するオオタカ、ブナなども名前を連ねており、いわゆる「自然の権利裁判」といえます。訴状は、従来の難解な文字や言葉が並ぶものとは、全く異なり高尾山の自然の豊かさを知らせる絵本も付けるなどしてわかりやすいものとなっています。原告らは、高尾山の守り神の天狗(てんぐ) にちなみ「天狗裁判」と名づけました。

訴状などによると、圏央道のトンネル、ジャンクションなどが高尾山や隣接する八王子城址下に建設されれば、都市近郊の豊かな自然が破壊され、景観が損なわれる。絶滅危ぐ種のオオタカの営巣活動など、生態系にも回復不可能な影響が出るなどとしています。                                   

弁護団の関島保雄事務局長は「高尾山の手前で圏央道の工事を止めたい。もう時間がない。3、4年以内に判決を取りたい」と話しています。なお原告は、引き続き募集中で、高尾山や八王子城跡に登ったことのある人、守りたい人は誰でも原告になれます。

訴訟に必要な費用は当面1万円です。年会費は3000円。  
       問い合せ:高尾山天狗裁判原告団
                     東京都八王子市裏高尾町1343-1                                   電話0426-622-8115  FAX0426-69-7387



自然物の代理訴訟

自然物に裁判を起こす当事者能力があるとする考え方は、1969年に米国で起こされた訴訟から生まれました。

米セコイヤ国立公園内のミネラルキング渓谷に計画されたスキー場建設について、環境NGO(非政府組織)が差し止めを請求。米連邦最高裁は72年に「NGOには訴訟を起こす適格性がない」との判決を下したが、その際、判事の1人が少数意見として「むしろNGOよりもミネラルキング渓谷自身が裁判を起こすべきだった」との趣旨の発言をした。

この発言は南カリフォルニア大のクリストファー・ストーン教授の論文を受けたもの。ストーン教授は、社会の進化に従い「法人」のような無生物まで法的権利があると認められるようになった現在、森や海などの法的権利もその延長に議論できる――と主張していた。

その後、米国内ではストーン論文を理論的根拠に、自然物を原告にした訴訟が起こされるようになった。73年に「絶滅の危機にある種の法」が制定され、こうした種を脅かす行為に対して市民が権利を代弁して裁判を起こせる、と明記された。同法に基づく訴訟で、フクロウやグリズリー(ハイイログマ)といった野生動物が原告となって勝訴した例もある。

日本では奄美の訴訟後、自然物を原告にした訴訟は天狗裁判や、オオヒシクイを原告にした訴訟(水戸地裁)など数件がある。

オオヒシクイ訴訟の原告代理人の1人で、環境NGO「野生生物保全論研究会」事務局長の坂元雅行弁護士は「オオヒシクイやアマミノクロウサギの訴訟では、原告の適格性をみるために裁判所が現地検証まで行った。当事者能力の認定は依然厳しいが、判断のプロセスには理解が示されるようになっていると思う。米国のように、市民が自然物の権利を代弁できるような法律を日本も制定する時期にきている」と話している。

毎日新聞 2001年2月25日



これまでの経緯

2000年10月25日 東京地方裁判所八王子支部に「高尾山天狗裁判」提訴
2001年1月29日 東京地裁八王子支部 口頭弁論
2001年3月26日 しかし、裁判所は高尾山、オオタカ、ムササビ、ブナ、八王子城跡の5自然物については、裁判所の合議(3名の判事による意見の統一)がまとまらないため、原告適格がないとして訴えを却下。 東京地方裁判所
2001年4月6日 「5自然物」控訴 東京高等裁判所
2001年5月30日 「5自然物」棄却 東京高等裁判所
2001年6月25日 第2回>口頭弁論
2001年8月20日 第3回口頭弁論
2001年10月15日 第4回口頭弁論
2001年11月26日 第5回口頭弁論
2002年 1月21日 第6回口頭弁論
2002年4月19日 国土交通省は土地収用法に基づき、あきる野IC〜八王子JCT間の事業認定
2002年5月17日 国土交通省にたいして1292名で異議申立



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自然物の却下

裁判所は高尾山、オオタカ、ムササビ、ブナ、八王子城跡の5自然物については、裁判所の合議(3名の判事による意見の統一)がまとまらないため、原告適格がないとして訴えを却下。

4月6日に提示された却下の理由は概ね以下の通りでした。

当事者欄記載の高尾山、ムササビ、ブナ、八王子城跡及びオオタカがいずれも自然物であることは、訴状中のその旨の記載から明らかである。

そして、訴状中には、人類が生物多様性を保全すべき義務ないし責任の根拠は、人類が自然に付与した文化的な価値には限定されず、自然物の存在自体の尊厳にもある、訴訟はそこから派生する自然物の生存に向けられた権利の究極の救済手段であり、特定の人が自然物のために訴訟を提起しようとしても当事者として認められないことがあるから自然物自体の訴訟主体性を認めるべきである、等の記述が認められる。

 しかしながら、民事訴訟の当事者となる一般的能力である当事者能力は、民事訴訟法、民法その他の法令に従って定められることころ、上記の自然物の類に当事者能力を認めたと解すべき法令の規定はない。
そうであれば、本件各訴えは、当事者能力を欠く者によってなされた不適法な訴えというほかなく、これを補正する余地もないことは明らかである。

 よって、口頭弁論を経ないで本件の各訴えを却下することとする。

また、この控訴が棄却された理由は概ね以下の通りでした。

本件訴えは、別紙当事者目録に控訴人として記載された動植物その他のものを当事者(原告)とし、被控訴人らが施工する上記第1の2項記載の工事により上記のものの生存や繁殖、生態系の維持が脅かされているとして、上記のもの生存の権利等に基づき、被控訴人らに対し上記工事の差止めを請求するというものである。

 原審は、自然物には当事者能力は認められず、本件訴えはいずれも不適法で

 そして、本件訴えに係る訴状及び本件控訴に係る控訴状には、自然環境の持つ価値には、人間や自然保護団体の権利や利益に還元できない自然環境そのものが有している部分があり、これは自然そのものが主体となってはじめて主張できるものであって、ここから自然物の生存の権利が派生し、その実定法上の効果として自然の当時者能力が認められるべきであるなどと記載されている。 

 当裁判所も、別紙原告目録に控訴人として記載された動植物等の自然物は、いずれも当事者能力を有していないものと判断する。すなわち、民事訴訟法28条において、訴訟上の当事者能力は、民事訴訟法、民法その他の法令に従う旨定められているところ、わが国の法令上、上記の自然物について、権利義務の主体たり得ることを認むべき根拠を見出すことはできないし、当事者能力を認めたものと解される規定もない。

 したがって、本件訴えは、いずれも当事者能力を欠く者を当事者として控訴代理人らによって提起された不適法なものであり、これを補正することができないことは明らかである。



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